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大河やまとちゃん誕生日記念SS

「誕生日?」
ある秋の日の放課後。
いつものように部室に集ってマジックに興じていると突然みくが話を切り出してきた。
「ええ。たしか今日はやまとちゃんの誕生日でしたよね?」
「あぁ……いわれてみれば」
誕生日なんて普段意識していないから今日だということを忘れていた。
というより、誕生日を教えた覚えがないのだが。
「自分の誕生日ぐらいは覚えておきましょうよ」
呆れたように笑うみく。
やれやれ、とジェスチャー。
張り倒したい。
「でもなんで急に?」
『誕生日おめでとう』
ぐらいならこんな勿体振った言い方をする必要はないだろうに。
「ええ。そこで提案なんですがこの後皆でパーティーしませんか?せっかくの誕生日なんですし」
「そうそう。私たち普段からマジックばかりであまり女子高生らしいことしてないしね」
つばめもすかさず乗っかる。
たしかにいわれてみると女子高生らしいことはあまりしていない気がする。
毎日のようにマジック。マジック。マジックだ。
「それに、同じ部活のお友だちだからお祝いしたいんですよ」
まなも手を鳴らし、賛成する。
ここまで期待されると仕方ないだろう。
「それなら……」
渋々といってはなんだが、まぁ。
自分はあまり他人から祝われたりすることに慣れていないのだ。
「いやー、提案してみるもんですねぇ。絶対断られると思ったんですけど」
そういいながら、みくが腕に抱きついてくる。
「もしかして、私が提案したからですか?」
上目遣いで悪戯っぽく笑いかけてる。
「べっ、別にみくが言ったからとかじゃなくて…!」
なんだか照れくさくなってしまい視線をそむけてしまった。


「それにしても誕生日パーティなんていつぶりかしら」
夕暮れのカフェの一角。
団体向けソファー席。
サプライズで出されたチョコレートケーキにパクつきながら、そうこぼす。
しつこすぎずあっさりとした甘さが口一杯に広がる。
チョコレートはこのくらいの甘さが好みだ。
三人で前々から計画してたらしい今日の誕生日パーティーは、わざわざ予約席に飾りつけまでされていた。
ここまでくると、やや恥ずかしい。
「おや?元ぼっちさんなんですかねぇ?」
私の言葉をきき、挑発するようにみくは笑った。
「そんなわけないでしょ。あんまりノリのいい集まりとか得意じゃないからそういうのをやってくれる友達が少なかっただけよ」
そう。
単純にそういうノリの友達が少なかっただけなのだ。
そう思いたい。
「やはりそうでしたか。私の読みは当たってましたねぇ」
読み。とは私がこういうノリは苦手だということだろう。
みくは得意そうではあるが。
というか口の端にクリームをつけていたら、その明察の威光もがた落ちだ。
私は手元の紙ナプキンでみくの口元についたクリームを拭う。
まるで保護者気分。
「今日のパーティーはみくちゃんが発案したんだよ」
ケーキを切り分け、対面に座るまなに食べさせながらつばめは笑う。
さっきはみくが『三人で前々から準備してたんですよ』なんていっていたが。
そういうことだったのか。
いや、まて。なぜまなとそんなことをしているのだ。
まなはさして満更でもない表情で差し出されるケーキを頬張る。
二人は…どういう関係なんだっけ?
と少し勘繰ってしまう。
「あー!言わなくていいですから!」
顔を紅潮させ腕を振り回すみく。
なんだか面白い玩具のようだった。
「そうなんだ…みくが…」
普段から喧嘩ばかりのみくが。
普段から衝突ばかりのみくが。
「え?……お気に召しませんでした…?」
やや不安そうにみくはこちらの瞳を覗きこんでくる。
「いやっ!そんなことないよ!?」
慌てて距離をあける。
「………」
「………」
漂う沈黙。
なんだか微妙な空気が出来てしまった。
「えーっと……じゃあここで私たちからやまとちゃんにプレゼントを渡したいと思います!」
つばめはそういいながら手を鳴らし、沈黙を破る。
更に鞄からラッピングされた袋を取り出す。
「結構大きい袋ね……」
鞄一杯ほどの大きさのそれは、見てくれのわりには重量はさしてなかった。
「まぁまぁ開けてみてよ開けてみてよ」
そう促され、リボンをほどくと
「これは…抹消者の編みぐるみ!?本当器用ね……」
袋のなかには《ファイレクシアの抹消者》の可愛らしい編みぐるみが鎮座していた。
よくあの造形を縫いぐるみに落とし込んだものだ。器用さが光る。
「実はまだあるんだよ!」
鞄から更に別のものを。
アクリルケースに入れられたそれはまぁ間違いなくカード。
「これって……」
このアクリルケースは写真でみたことがある。PSA……カード鑑定の評価表も兼ねたカードローダーだ。





「えっ!?!?暗黒の儀式!?しかもアルファのPSA10……!?それに抹消者のPSA10も……!」
表を返して驚愕した。
たしか二種類ともかなり高額のはず。
「見つけるの大変だったよ~」
大変なんてものじゃないだろう。
PSA10は数少ないのに。
「ありがとう…!こんな高いもの貰って大丈夫かしら……」
ちょっと、不安になる。
額が額だ。
学生の財布にはなかなか厳しいものがある。
「いいよいいよ。私とやまとちゃんの仲なんだし」
そういいながらつばめはにっこり笑う。
そういわれると悪い気はしないというか胸が少し熱くなる。
「次は私からです!」
そしてまなから差し出されたのは一つのカードローダーに入れられた
「カード…?」
「そうですよ!見てみてください!」
いわれるがままに表を向ける。
「………!!!???」



《裏切りの都》
しかも実在すら怪しまれる貴重品。
そう。Foil仕様。
「状態はあまり良くないですけど……頑張ってみつけました!」
えへへ…と笑うまな。
そもそも売ってるかも怪しいレベルなのに。
ここまでくると状態云々なんて些細な問題だろう。
「本当に凄いカード……ありがとう!」
「いえいえ。よろこんでいただけて頑張って見つけた甲斐があったというものです!」
にっこりと微笑むまな。
本当に凄まじいプレゼントをくれた。
「次は私からのプレゼントですよ!」
みくはやたらと自信ありげに、一つのものを手渡してきた。
「デッキケース……?」
黒革のケース。
大きさ的に1デッキはある。
「ふふふ……見て驚いてくださいよ……!」
そういわれ、適当にカードを抜き出し確認すると



《むかつき》
愛用の一枚だ。
しかも鮮やかなFoil仕様。
そしてもう一枚抜き出すと《暗黒の儀式》



FtVにて収録された特殊Foil仕様。
そして《闇の腹心》《水蓮の花びら》
その全てが、デッキおおよそ全てのカードが美麗なFoil仕様だった。
「これって…フルFoil!?」
「ええ!流石にアンシーとかフォイルそのものが存在しないカードはありませんが可能な限り全てフォイルです!アンシーはベータ版ですし、他のカードも状態も可能な限りニアミントですよ!」
なんというか…凄まじい金の暴力だ。
それに金だけでなく、これだけのカードを見つけ出すのには相当な時間と労力を使っただろう。
「本当に…こんなの貰って大丈夫なの?」
「ええ!私からの好意です!」
えへへ…と太陽のように笑うみくや皆を見ると
「ありがとう、皆」
少し涙が出かけてしまった。
というか、少し、出てしまった。
「あれれ?やまとちゃん泣いてます?」
「うっ、うるさい!泣いてないわよ!」


「みく……本当に今日はありがとうね」
なんやかんやでケーキや料理を食べたりマジックに興じたりしたその後。
街灯が照らす帰り道。
寒空の下をみくとやまとは並んで歩いていた。
つばめもまなも別の用があるとかで先に帰ってしまった。
何故か、二人揃って。
「いえ。あんなに喜んでもらえて事前に準備した甲斐がありましたよ」
みくは微笑みながら星空を見上げる。
そんなみくを見て、思わず笑みがこぼれる。
「今までで一番最高の誕生日だったよ。本当に」
思い起こせば、今までにないくらいの密度だった。
本当に一番に最高だった。
「やまとちゃんらしくないくらいデレデレですねぇ、今日は」
からかうように笑うみく。
「たまにはデレさせてよ」
ふんっと鼻をならして顔を背ける。
たまにはデレというか、素直になりたいときもある。
「いつもデレデレだと有りがたいんですが……あ、そうだ」
思い出したかのようにみくは鞄をまさぐり、ケースのようなものを取り出す。
そしてそのケースを開くやいなや、私の首もとに手を回し、密着してきたら、
「えっ!?顔近い…!」
少し怖くなって目を閉じる。
これはあれか。
期待していいのだろうか。
しかしそれとは裏腹に。
もう大丈夫ですよー、とみくが離れると私の首には先程にはなかったはずの一つのネックレスがかかっていた。
細い金属のチェーンに、角柱型の黒い宝石らしきものが備わっていた。
「ふふーん。黒曜石のネックレスです。さながらMox jetですね。私のパールネックレスと同じデザインなんですよ~」
そういいながらみくは襟元からネックレスを引っ張り出す。
そのネックレスには真っ白い真珠が施されていた。
「へぇ…綺麗ね…」
街灯に石を照しつつ見つめる。
電柱の光を反射し、不思議な閃光を散らしていたそれを素直に綺麗だと思った。
「それにもう一つ。眼、閉じてください」
「?なにかしら」
唐突な指示。
ワケもわからず私は閉じた。
すると首の後ろに手がまわってきて
「!?」
キスをされた。口と口で。
思わず眼を開くと、みくの顔が目の前にあって、頬が密着寸前だった。
柔らかい唇同士が触れ、息と鼓動が0距離で伝わってくる。
みくの呼吸の音が近距離で聞こえ、体を硬直させてしまう。
最初は抵抗したものの全身を甘美な痺れが駆け抜けそのまま受け入れてしまう。
彼女とのキスは多分一瞬だったろう。しかし、体感的には一時間はあるように感じられた。
そして口を離し、少し見つめあう。
なんというか、みくは普段見せないような艶めかしい顔をしていた。
正直、胸が高鳴ってしまう。
さすがのみくも恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして距離をあける。
「察しのいいやまとちゃんならこのキスの意味……分かってくれますよね?」
そういいながら軽やかに、向こうの街灯へ彼女は駆けていく。
「私の家はすぐ先なのでこのへんで!また明日会いましょう!やまとちゃん!」
遠くから、みくは手を振った。
なんというか、キスしておきながら逃げるのは卑怯だと思うのだが
「うん……また、明日」
そう答えてから、唇をなぞる。
暖かくて、柔らかかったその感触も。
近距離で感じた甘い香りも。
体を駆けた甘美な痺れも。
まだ、体のなかに残響している。
なんというか悪くないなと思ってしまった。
不意打ちのキスの真意を理解し、思わず紅潮してしまう。
あぁ、そういうことなのか。
なんというか、忘れられない誕生日になった。
そう思う。
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